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2004.02.23

書写山円教寺

映画「ラスト・サムライ」のなかで、トム・クルーズ演じる米国人大尉が、渡辺謙扮する勝元と心を通わせ、武士道に共感する場面は、ここ書写山(しょしゃざん)で撮影されました。

[書写山円教寺]西の比叡山と称される天台宗の古寺。西国27番札所でもあり、ロープウェイを降りれば、そこは深山幽谷の世界。京都の清水寺に似た摩尼殿、重要文化財の大講堂、食堂などは一見の価値があります。

国宝・姫路城(兵庫県姫路市)の北西6キロにある霊峰。山上の書写山円教寺(えんぎょうじ)は966年に開かれた。監督の力、俳優の魅力は言うまでもないが、作品に命を吹き込んだのは、この山の、千年に及ぶ歴史ではなかったか。

 参道のひとつ東坂を上った。淡雪の残る道を踏みしめると、大樹や大気に宿る不思議な「何か」に触れている気がした。

 時宗の開祖、一遍も亡くなる2年前にこの地を訪ね、「諸国修行の思い出はただ書写山巡礼にあった」と言い残している。

 小一時間で参道を上りきり、杉木立のなかをさらに20分。本堂の摩尼(まに)殿から奥に進むと、突然、明るい空間が開けた。

 大講堂、食堂(じきどう)、常行堂(じょうぎょうどう)。「コ」の字形に配された三(み)つの堂と称される建物群が、修行の中心だった。静寂のなかで、知覚が研ぎ澄まされていく。

 ハリウッド映画のつくり手を魅了したのは、この感覚だったのかも知れない。

 ■誇りが守った祈りの地

 「ラスト・サムライ」のエドワード・ズウィック監督は、精密な考証で歴史ドラマをつくりあげることで知られる。

 明治維新でほろびゆくサムライ、武士道をテーマにした映画のロケ地を探していた3年前のこと。城郭研究のために姫路城を訪れた監督を、ロケを支援する「姫路フィルムコミッション」の関係者が誘った。

 「過去の遺物ではなく、今も人がそこで生活し、祈りをささげる場所として生きている良さを見て欲しい」

 監督は畏敬(いけい)の念を持ち、ロケ地にすることを決めた。

 撮影は一昨年秋。三つの堂や奥の院がスクリーンを彩る。読経のシーンに大講堂が使われ、食堂は勝元の邸宅になった。

 大樹孝啓(おおき・こうけい)住職(79)は、クルーズが何度も「ビューティフル」とつぶやくのを聞いた。

 神学校で学んだ経験のあるクルーズのストイック(禁欲的)な面が、武士道のテーマにも通じる山の精神性と共鳴したのだろうか。

 「緑豊かな自然と、信仰を伝える文化遺産が調和して残る山の魅力をわかってくれた」と住職は言う。

 映画が公開された昨年12月の参拝客は前年比25%増の約2万人。若い女性のグループも目立つ。「映画出演」という試みは上々の効果があったようだ。

     ◇

 天台宗の円教寺は「西の比叡山」と呼ばれる。開祖、性空(しょうくう)は、吉兆を表す雲に誘われて書写山に入ったと伝わる。

 書写山の名の由来は、諸説ある。釈迦が経典を説いたインドの霊鷲山(りょうじゅせん)を書き写したごとく似ているからとも、境内の白山権現に祭られている素戔嗚尊(すさのおのみこと)の「すさ」がなまったとも言われる。

 平安時代から鎌倉時代にかけての最盛期は支院も増え、「書写千軒」と称された。

 だが、試練が訪れる。

 太閤秀吉は、この山にとっては大泥棒だ。播磨制圧の拠点として侵攻。寺領を奪い、仏像や仏具の多くを持ち出した。

 明治維新でも境内地や田を没収され、生活に困った僧侶は離散。30ほどあった塔頭(たっちゅう)寺院も多くが取り壊され、仏具を売り払って山を下りた者もいた。

 法灯を伝える責務を胸に、山に踏みとどまったのは4人。ある決意が寺の文書に残る。

 山以外から僧を頼らず、弟子から生え抜きを育てる--。

 凜(りん)としたプライドがにじむ。

 成果は昭和に入って表れ、再建が進む。市民の寄付があり、小学生が瓦を背負って山を登り、修復に貢献した。

 困難は、修行のために性空が与えたものだったのかも知れない。後生の人たちは、それに見事にこたえてみせた。

     ◇

 06年は、性空の没後千年。その千年遠忌(おんき)を前に、山では途絶えていた三千仏礼拝行などの伝統行事が相次いで復活している。

 きっかけは、行事のあり方を記した「書写山年中行事記」の発見だった。86年に塔頭寺院を修理したときのこと。執事長の大樹玄承(けんじょう)さん(47)が、ごみの中で踏みつけた冊子が「行事記」だった。

 廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で行事が廃れるのを恐れて、明治時代に一人の僧が書き残した。「先人から復活を頼まれた気がした」と玄承さんは言う。

 ふもとには山を支える人たちも控える。

 創作料理店を営む佐藤光明さん(50)は、商社勤めの転勤先だった姫路で、土地柄にほれて住み着いた。行事記にある料理の復活を住職に持ちかけられ、いま塔頭寺院のひとつで精進料理を出す。

 性空の家来の子孫とされる梅津家は、毎年1月の「鬼追い会式」を仕切る。昨年からは小学校でも披露する。「伝統を絶やさない責任と名誉がある」と、梅津邦彦さん(70)は言う。

 作家平岩弓枝さんが、この山に登ると「自然に合掌し礼拝する心になる」と書いていたのを思い出した。性空が山に刻み込んだのは、自分自身に向き合う心だったに違いない。

 ハリウッドの監督やスターも、その心に触れたのだ。

 木立の中で、そう思った。

 <アクセス> 大阪から姫路までJR新快速で約1時間。姫路駅から市営バス・書写ロープウェイ行きで終点まで約30分。ロープウェイ山麓(さんろく)駅(0792・66・2006)から山上駅まで4分(往復900円)。車は山陽自動車道・山陽姫路西ICから10分。山麓駅付近に市営駐車場がある。

 <探索コース> 円教寺(0792・66・3327、志納金300円)は西国三十三霊場の第27番札所。境内は約30ヘクタール。山上駅から約1キロで本尊の如意輪観音をまつる摩尼殿。境内にある約40棟のうち大講堂、食堂、常行堂は室町時代の再建で国の重要文化財。弁慶が青年時代に勉強したという机が食堂にある。

 山上へは自然道6本があり、季節の植物や野鳥の姿を楽しめる。山麓駅近くに姫路市書写の里・美術工芸館(300円、0792・67・0301)。地元ゆかりの元東大寺管長・清水公照さんの作品や郷土玩具などを見学できる。

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「前方に勇壮にそびえ立ちますのは、西の比叡山、書写山でございます。」 ロープウェーのガイドさんは慣れた口調そう言った。 「うまいこと言うな、なんとな... [続きを読む]

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