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2004.03.11

アフガン零年」/ OSAMA

世界の遺跡めぐりを旅の楽しみとする私は、アフガニスタンの仏教遺跡、バーミヤンが破壊されたとき、うちのめされた。2001年3月、偶像崇拝を禁じたタリバン政権によって爆破されたのだが、この爆破は事前に予告され、破壊の瞬間の映像は世界中に配信された。

首謀者とされる、このイスラム原理主義勢力である「タリバン」は、その後、急速に世界の脅威になっていった感がある。

こうした“個人的”背景があったせいか、期待に胸をふくらませながら、このタリバン政権崩壊後初の自国映画の試写に足を運んだ。


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監督はアフガニスタン生まれのセディク・バルマク。タリバンの圧政下では隣国パキスタンに亡命していた経験をもつ。それほどの時代は、やはり他国の人間では語れまい。また、語る責任を負えるのもアフガニスタン国民だけだろう。

この映画は、タリバン政権下で生きる少女を主人公としたフィクションだが、詳細な知識のない私たちが観ると、あたかもドキュメンタリーのように映る。これはバルマク監督の手腕でもある。

さて、タリバン政権下の禁制の1つ「身内の男性を伴わずして女性の外出は許されなかった」--から物語は膨らんでいく。タリバン政権以前から、幾度となく戦渦をくぐりぬけてきたアフガニスタンでは男性の数が少ない。女性ばかりが残った中で、女性だけの外出禁止令を敷いたわけだ。こうした、閉じ込められた存在としての女性を、バルマク監督は繊細に、究極的に描く。

また、“残像の名手”といっていいほど、惜しみなく1コマに時間を与えるのもバルマク監督の特徴だ。この技術は、映画人として旧ソビエトへ国費留学したことの賜物だろう。


セディク・バルマク監督


たとえば、こんな場面。少女の母親は、家族ではない男性を夫と偽って同伴させ、仕事を求めて外出する。男のこぐ自転車の荷台に腰掛ける母親。カメラは彼女の足元を映し出す。サンダルをはいた素足が、母親の被るブルカの裾からのぞく。回転が遅くなる車輪に、夕暮れと2人の“暗黙の危うさ”が絡まっていく。そこに脅威のように真っ黒な軍靴が現れる。警棒の先が女性の素足を突き、サンダルは静かにブルカの中へ隠れていく。

主役の少女が少年になりすますのは、タリバン政権下で、ある少女が学校へ行きたくて少年の姿を装ったという事実から着想を得たというが、生きることの過酷さを明確に観客に伝える手法で、監督が映画に潜(ひそ)ませたある種のからくりだともいえる。

というのも国によって、あるいは時代によって、男女の距離は異なるのと同様、宗教や民族理念に基づく感性や日常はさまざまだ。そこで衝突を生むのではなく、認識や敬意をもつことこそが、相互理解のうえでもっとも必要だ。そんな主張を密やかに込めた設定なのではないか。

では、私たちはこの映画から、その相互理解のための何を得ればよいのか。アフガニスタンは今“零年”、すわなちゼロからもう一度始めるのだという情熱を、まず知ることではないか。

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» 映画鑑賞感想文『アフガン零年』 [さるおの日刊ヨタばなし★スターメンバー]
さるおです。 『OSAMA/アフガン零年』(2003年)を観たよ。 監督はセディク・バルマク(Siddiq Barmak)、使命感に燃えてがんばって作った作品に違いない。 出演はマリナ・ゴルバハーリ(Marina Golbarhari)、この人は女優さんではない。この映画のとおりに生きてきた、アフガン..... [続きを読む]

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